IOL第一章「少し違う方向に進んだ地球の話」その4(仮) 後半
「そこで第一に重要なのは五日後の新生徒会挨拶だ」
「そこでのスピーチによって今年の生徒会のイメージが決まる、というわけですね」
「そう、そこでのアピールに成功すれば第一歩だ。そこから生徒会誌、活動報告板なんかを置いていく。そうして『親近感のある生徒会』が完成すればある程度いい学校になる」
「この生徒会の印象によっては、学校全体のイメージアップもできるよね」
「そういうことだ。半月後の新入生歓迎祭にも影響が出るだろうしな」
新入生歓迎祭とはこのアステリア国立学園における新入生を祝う祭りで、7月に行う文化祭と共に「二大学園祭」とされている祭りのひとつで、一般公開もされる。
「そういうことで、全員新生徒会挨拶の自己紹介、しっかりお友達いっぱいできるように考えてきてくれ」
「また難しい要望ですね、全く」ヤフーは呆れたような口調でぼやく。
「申し上げにくいのですがライフさん。挨拶は会長のみですよ」ハンナは事前にしっかり予定なんかを確認してくれているから助かる。
「そうだよ。だけど考えるの面倒だし、お前らに任せるわってこと」
「ホントにライフくんは面倒くさがりすぎだよ」
「そうだそうだ!会長も仕事しろ!」
「お仕事しないいけない会長さんは……どうしましょうかねぇ……」
「多少仕事らしいことをすることを推奨しますよ、ライフさん」
「言いだしっぺなんだからしっかりやってほしいもんだぜ」
「全くです。僕こういうの苦手なんですから」
言い分は分かるがやはり仕事はしたくない。
「仕方ないな」
俺は一呼吸置く。
「数学の七大懸賞問題の一つが解明された論文」
「ぜひ読ませて下さい仕事は引き受けます」
ヤフー君は目を輝かせている。
「スポーツジム半年間無料優待券」
「考えればいいんだな?」
ガレスは筋トレに目がない。
「フィランディアの最古文学小説」
「なんなりとお申し付けください」
ハンナさんも実にメイドさんらしくなった。
「アステリア国立美術館入場券」
「わたくしとしたことが、妙に頑張りたくなってしまったわ」
リーアさんは張り切っているのが分かりやすい。
「ショッピングモールの人気店のパフェ及びワンピース一着」
「よっしゃやる気しかでてこないぞおおおおおおおおおおお!」
ぽよちゃんもやる気でなによりだ。
「もう!私はあんなふうに言いくるめることなんて出来ないんだからね!」
この女だけはそうはいかない。……仕方ない。
「一人の少女の命」
「……!?」
少女の紅の瞳が一瞬強張る。そうしなくてはならない理由があるからだ。
……そう、俺にはこの少女に関しての『弱み』を握っている。下手をすれば殺すことだって出来るんだ……。
「……わかったわよ」
「おっと会長?リラさんの弱みを握ってたりするの?」
周りも一瞬遅れて凍りつく。しかし俺は窓を開け放ち見事に裏切って見せる。
「まぁそんなのはないんだけどね!」
窓から飛び出し全身を上に向けた時、リラの騙されたと言わんばかりの、それでも実際『一人の少女の命』を担うのだから文句を言えないという複雑な顔をしている。
「……してやったり」
若干の優越感に浸り、俺はすぐに落ちてくる少女と屋上から聞こえる悲鳴の対処をすることにした。