IOL第一章「少し違う方向に進んだ地球の話」その1(仮)
春。
その季節は、新たな気持ちを胸に人々が前へ進もうとしている季節。
そして、その努力を阻害しようとする睡魔の下、見事に敗北を喫して、幸せそうな顔を浮かべながら机に突っ伏している少年、俺がいた。今日は一月一二日だっけか。多分、腹の減り具合からして三限だろうか。終わるまであと二〇分ってところかな。
とまぁ、いろいろと考え事をして寝ていると、すこしお怒りのご様子の声が聞こえてきた。
「ら・い・ふ・く~ん?」
おそらくこの声は、今の三限(うちの学校は六五分×五時間の学校なので昼前の授業になる)の歴史の授業担当のシュティラ先生だろう。
俺のクラスの担任も務める彼女は、名前の通り「かわいらしい」というのが妥当だろう。
俺に事情がなければ、もしくは俺に事情があれば、口説いていてもおかしくない。
そんな彼女がひきつったような声で俺の名前を呼んでいる。
理由は、見事な睡眠をキメている俺に怒っているのだろう。
予想通りその右手にいつも握られている厚さ三センチの教科書が空気を斬って振り下ろされる音が聞こえた。
直撃を避ける為に、俺は謎に深く考え込まれた物理計算を行い、先生のか弱い細い腕を軽く後ろ側へと流す。
教科書は見事に軌道を変えて、予想通りに、俺の後ろの席で右腕を伸ばして眠っているヨハンの腕に華麗なまでにクリーンヒットした。
ヨハンが叫びをあげると共に、俺はシュティラ先生の顔を拝む為に体を起こす。
見事に予想が外れあっけにとられながらも痛みに騒ぐヨハンを心配しながら、まだあどけなさが残るほどかわいらしいと言えるその女性は、俺が予想していたことと全く同じ言葉を口にした。
「授業中に居眠りなんて! どういうことですか!」
すかさず、この女性が一番可愛い反応が見れる言葉を選別する。
「まぁそう怒らずに せっかく可愛いのに勿体ないですよ」
そう言うと、やはり一番可愛いであろう反応を示してくれた。
「可愛い…? そっ///……そんなことはいいんです~!」
ほれみろ可愛い。
「それより話聞いてましたか? 先生の話を聞かないなんて、生徒の代表としてどうなんですか?」
この状況で教職員が俺に何を求めるのか、少し考えれば分かることである。
「聞いてましたよ この国、アステリアの戦争時代について、まとめればいいんですよね?」
「え? あ、はい、そうです、お願いしますね」
別に心を読んでるわけではない。ただ今置かれている状況と、教室に供えられた大型モニター、そして俺に対する期待値なんかを考えれば分かることである。
「ん~と…どこから話せばいいのやら」
俺は授業時間を丸々使い切ってやろうと、とりあえず教科書に書いてある内容からその戦いにて実装された兵器や使用された陣形にそれによる戦果、さらには当時の政治的見解に民の間で流行になっていた事なんかをまぁいろいろと説明して見せた。